よく使われる塗料
ステイン
ステインとは「染料」の意です。機能的に、まさにその通りです。本来塗装には二つの役割があります。美観を整えるという機能と、塗膜による木材表面保護という役割です。ステインだけだと後者が心もとないです。
水性のものが取り扱いしやすい。違う塗料を重ね塗りする場合は、他の塗料と同様、試し塗りが必要です。油性ステインを使用しクリアラッカー等を上塗りする場合は変色したりしないかなど注意する必要があるでしょう。水性、油性ともに、色の種類も多く、入手しやすいのが長所。
クリアラッカ-
木工の世界では、木目をいかした塗装方法として一般的に用いられています。塗装すると木材が濡れたような色となり、その木目が強調されます。ただし、比較的ムラになり易いので注意。塗装膜が堅く、耐水性、耐薬性に優れている塗料です。また、乾燥が速い。入手しやすいことは長所。
元来、船の塗装はつや消しが基本とされていることから、表面が光るクリア仕上げは避けられていましたが、昨今つや消しクリアが販売されているようですので、ためしてみても良いかもしれません。
カシュー
カシューナッツのカシュー油を原料にした漆系の塗料。塗装膜は厚いが、ムラが出にくく、木製品らしい艶が良く出るので好まれることも多い。(一般には、濃度が高いほどムラが出やすいとされます。)
ホームセンター・DIY店に、たいてい置いてはいますが、大きい店でないと、必要な色を取り揃えるのが難しい。なお、透明系には「クリア」「赤溜」「透」など種類が豊富です。
船の塗装はつや消しが基本で、塗膜が薄い方がスケール感からなじみやすいため、採用する方は少ないようですが、うるし塗に近くコンパウンドで仕上げしたりすることなどから高級感をだしやすく、飾り台などには、かなり向いていると思います。
オイルフィニッシュ
最近、もっとも帆船模型の塗装に使われている方法ではないでしょうか。木工の世界では木目をいかす塗装方法としてプロの木工作家などに人気があります。
塗装すると木材が濡れたような色となりその木目が強調されます。オイル塗装はやり直しがききやすくその結果ムラが出にくいとされます。
オイルフィニッシュで扱うオイルの主成分は亜麻仁油ですが、木工の愛好家や帆船モデラ―もトップレベルの上級者はご自身で亜麻仁油をベースにしてオイル調合をして使われていますが、一般には調合済みの「ワトコオイル」「オスモカラー」という市販のオイルを採用しておられます。(やはり楽だからです。)
ウエスに染み込ませたオイルは、自然発火することがあるので注意しなければならない点と、本来は数年毎に塗り直しをする必要がある点は気をつけなければならない点です。(後者は必ずしも必要ではないようです。それらしい味がでてくるようです。)
なお、チークオイルは、チークのオイルではなくチーク材に塗るオイルのことで、これもまた主原料は亜麻仁油です。
ニス
塗膜が厚くつやがあるため、つや消しを基本とする帆船模型では、スケールと不釣合いになりやすいことからも避けられる傾向にあるようです。リアルさを追求する場合は避けたほうが無難でしょう。どうしても塗りたい場合は薄く塗ったりするような塗膜の厚さへの配慮が必要と思われます。
起こりやすい失敗例
以下の例と原因は一例ですので塗料の種類によって注意してください。
亀裂・ひび割れ
上塗りをしたあと生じる場合は、下塗りで使用した塗料との相性が問題となっていることが多い。
細かいシワ
普通は下塗りの乾燥が不十分なために生じることが多い。カシューでは塗装膜が厚すぎると、しばしばこの現象が生じる。
小さな穴
一般には下地調整(塗料を塗る前に塗る表面をならす必要があります。)が不十分であるか、塗った塗料の濃度・粘度に問題がある。
(薄すぎないか、不必要に混ぜすぎて気泡を生じさせてないか)
艶がでない
塗料が薄すぎる
ムラ
塗り方に起因、もしくは塗料がよく混ぜられていない。
追補:アクリル塗料
彩色する場合、帆船模型でも、やはり着色にはアクリル塗料が人気です。
アクリル塗料の特徴は、色の種類が多く表現力に富むこと。また、特に水性の場合、油性塗料などと比べ筆等の用具のメンテナが非常に楽、毒性がなく環境に優しく、臭気もなく換気の必要もなく取り扱いが楽であることなどがあげられると思います。(様々なタイプがあるのでひとくくりにはできないようですが)
なお、一般的には、アクリル水性塗料では、水性となっていても専用薄め液が指定されていたり、また、水を入れると僅かながら変質してしまうタイプのものがあったりしますのでご注意下さい。(有名な模型用日本製塗料はすべて、そうなっています。)
左の塗料は船舶模型の専門メーカー、カルダークラフト(JOTIKA)が扱うイギリス製のアドミラルティというシリーズの模型船用の塗料です。
17世紀から19世紀のイギリス海軍の指定色と合致させていることが一番のミソです。ベテランの方からも取り合扱いやすいと好評をいただいています。
(もともと、お客様の声から取り扱いを開始しました。ただ輸入してからというもの、メーカーから輸入のたびに値上げされてプンプンしております。)
なお、この塗料は普通の水で薄めることができ(海外製のものにはしばしばみられます)、環境負荷の少ない、安全性の高いものであることをメーカーから輸入時に確認をとっています。
一般的に彩色する場合、エアブラシを使うと非常に楽で綺麗に仕上げることができますが、他方、対象が木造で、腐食の激しい海の上のものですから、リアル感をだすために上級者はあえて筆を使用したりしていることもご留意ください。
(=ただし筆塗りは技術が必要ですので万人にお勧めできません。が、練習しましょう)