接着の基礎

以下は、しっかりと引っ付けるための条件、接着剤の基礎です。

木材の種類

木材の比重の大きいものほど、接着力も強くなります。(針葉樹より広葉樹の方が比重が高い。)
 ただし導管が大きくて、その数が多いものは接着剤が木材の中に吸収されてしまうので、接着力が弱くなります。そのため強度が必要な場合は、導管を何かで塞いだうえで使用したりします。

木材の含水率

接着に適した含水率は通常8%~12%とされます。木材が小売店で売られているときの、含水率は、このくらいのようだと言われています。

木材の表面

木工ボンドはその水分が木材に吸収されて、接着します。(蒸発するのでは、ありません。) したがって、木材を曲げるために水に浸けたときは含水率が上がってしまっていますから、接着不良の原因になりやすいので気をつけましょう。(よく乾かしましょう。)また、乾燥させすぎても、接着不良の原因になるそうです。

接着膜の厚さ

・凸凹があるほど接着力が弱まります。したがって、鋸などで切った面より、かんなをかけている面のほうが望ましいことはいうまでもありません。
・なお、木材の縦断面より横断面(木口面)のほうが、接着力が弱くなります。
・帆船模型の小さい材料に、かんなをかけるのは難しいので、サンドペーパーで我慢することも多いと思います。
・接着剤を塗った際は、厚みが0.1mm程度で、同じ厚さ、均一な膜状が良いとされます。
(凸凹があると同じ厚さで均一の膜状ができないので、やはり接着が弱くなります。木工の世界において、クランプを使って木材と木材を強く締め付けたりしているのはこれが理由です。締め付けの力は、接着面に均一にかかるようにしましょう。)

その他

・汚れがあることも接着力を弱めます。(接着剤の使用方法に、まず油分やほこりを取り除くと書いているのはそのためです。)
・接着剤をたくさんつけると強く引っつきそうなイメージですが、実際は逆効果です。接着膜の厚さの箇所に書いているような適量が好ましいと考えられます。
特に瞬間接着剤は、普通の接着剤より少し少ないくらいほうが良く接着できるといわれています。塗膜が薄い方が好ましいのでしょう。

帆船模型でよく使う接着剤

木工ボンド

正しくは「酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤」といいます。

使用上の注意点など

  • 熱に弱いので60度~80度で軟化し、接着力が低下します。
  • 酸性なので金属につくと錆びてしまいます。金属についた場合は拭き取りましょう。
    (特に刃物に注意、切れ味が悪くなります。)
  • 水性なので耐水性に欠けます。
  • 他の接着剤が混ざると接着力が弱まります。
  • 木口面に使用する場合、プロは木口面の導管を、小麦粉などを混ぜた木工ボンドで、ふさいでしまいます。ただ、手間が大変です。二度塗りして接着剤で塞いでしまうのは、一つの解決法になるかもしれません。一度目は、凸凹や吸水を防ぐために塗ります。生乾き状態のところへ、もう一度塗って、引っ付けます。
  • オイルフィニッシュという塗装方法をとる場合、木工ボンドの拭きのこしなどがあるとムラの原因になります。はみ出た個所はよくふき取る必要があります。
瞬間接着剤
  • 通常の接着剤より、少な目に使用するのが、コツです。やや、少な目のほうが、引っ付く力が強くなるのです。引っ付けた後は、加圧するほうが引っ付く力が強くなります。(塗膜の厚さ、均一性の関係と思われます)
  • 昔ほど高価でなくなったため多用する方がめずらしくなくなってきています。船体にうっかりつけてしまうと白濁しますので注意。
エポキシ樹脂接着剤

金属部品の取り付けに使用。非常に強力ですが、今でも結構高価なので大量には使いにくいと思います。

追補(2021年3月):

木工ボンドは、アメリカではすでにタイトボンドにその立場を奪われているようです。木工ボンドに似た黄色の粘性のあるボンドで、かなり強力に接着できると聞いています。ただ、木工ボンドは水に弱く、この性質は、ちょっとしくじって、やり直すときにかなり重宝します。そのため、帆船模型では、今でも木工ボンドを利用する方が多いです。

瞬間接着剤は、長いあいだ、ショックに弱いとされてきました。ところが7~8年前から、ショックにつよいものが出回り始めています。また木工ボンドや瞬間接着剤も金属を接着できるものがでてきています。ただし、ここで気をつけたいのは、新製品と呼ばれるものは、接着して10年後の強度を試したうえで販売していないということです。この点、主たる接着剤として、使用なさるかどうか、製作者の判断によると思います。

形態による分類

溶剤型

主成分を水又はその他の溶剤で液状としたもの

エマルジョン(乳化)型   微粒子状の主成分を水で乳化させたもの(例:「木工ボンド」)

無溶剤型

溶剤をほとんどふくまず、主剤と副剤を混ぜ合わせるもの(例:「エポキシ系接着剤」)

成分による分類

蛋白質系接着剤

動物質のものと植物質のものに分かれる。
代表的なものは「にかわ」。高級家具や楽器などに使われている。(ホルマリンを混入していることが多い。)
主に人工的に合成された高分子化合物を原料としている。

酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤

木工接着剤の多くはこのタイプ。
(長所)常温・短時間に硬化するし、硬化後は無色透明なので、見た目もよい。また衝撃に強い。硬化後も、刃物を傷つけない。
(短所)熱に弱く、60度~80度で、軟化して、接着力が低下する。酸性である。耐水性がない。

シアノアクリレート系接着剤

日本ではシアノアクリレート系接着剤といえば瞬間接着剤となってしまいますが、シアノアクリレート系接着剤はさまざまなものがあります。筆者が個人輸入して使ったことのあるシアノアクリレート系接着剤は、5秒くらいで接着したように思います。そのため、多少ずれた位置にあっても、慎重に位置直しができ便利でした。

合成樹脂系接着剤

ユリア(尿素)樹脂接着剤…尿素とホルマリンの縮合物で無色白濁。普通のお店でお目にかかることはありません。
 分類でいえば無溶剤型。副剤として、塩化アンモニウム溶液を用いる。比較的安価だが、取り扱いが難しそう。

エポキシ樹脂接着剤…分類でいえば、無溶剤型。
(長所)異種材料の接着も可能。耐薬性があり、引っ張り・衝撃などにも強度が確保できる。
(短所)比較的高価

フェノール樹脂接着剤…フェノールとホルマリンの縮合物。色は黄褐色か赤褐色。これも、普通のお店でお目にかかることはありません。
(長所)接着力・耐薬性・耐菌性に優れる。また非常に耐水性に優れている。
(短所)接着層が着色する。

合成ゴム系接着剤

ニトリルゴム接着剤、クロロプレンゴム接着剤などがある。溶剤が入っているので火気、臭気に気をつける。